亡くなってしまった後のペットの生活はどうなるの?:ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」にみる法律の豆知識​

犬の養育を条件に、2億円の遺産

雨宿りをしていた柿崎は、木の元でずぶ濡れになっていた犬を見かねて、保護しようとします。が、そこへ現れた女性・服部和子に、犬泥棒呼ばわりされてしまいます。
「あなた、犬ドロボーね!?返しなさい!そのコは2億円を相続しているのよ!」

柿崎の事務所に、犬の飼い主である野比康介が、引き取りに現れました。康介は、肺癌で亡くなった兄の謙太から「サブローが亡くなるまで面倒を見ること」を条件に、2億円の遺産を相続したのでした。「負担付死因贈与契約ってやつですね」と柿崎。

和子はその契約の監視役で、ペットショップオーナー兼ブリーダーでもある彼女が、きちんと飼育がされてないと判断すれば、相続は無効になる、と続けます。

「もし康介さんがきちんと飼育しない場合は、遺産は誰のものに?」と尋ねると、和子は「飼育してくれる人です」と答えました。和子がサブローの飼育状態が不良と判断したら、2億は彼女のものになると暗に主張したのです。

康介は柿崎に「あなた、遺産相続の弁護士なんですよね。なんとかなりませんか?」と懇願しますが、「契約は既に発効されています。残念ですが、サブローが突然亡くなったりでもしない限り、どうにもなりません。どうぞお引き取り下さい。」と、柿崎は答えます。

負担付死因贈与契約とは

負担付死因贈与とは、一定の義務を負担することを条件に、死亡を原因として財産を受け取ることができる契約です。

負担付死因贈与は、書面がなくても成立しますが、贈与する人と贈与を受ける人の合意が必要となります。

負担付きで財産を相続させる方法としてもう一つ、負担付遺贈という方法があります。遺贈とは、遺言によって財産を誰かに与えることで、遺言者と受遺者との合意は必要ありません。

負担付遺贈は、贈与する人が死んだ後に放棄される可能性がありますが、負担付死因贈与は合意が成立していたら、贈与者の死後に一方的に破棄することはできません。より確実に履行してもらいたい場合には、負担付遺贈より、負担付死因贈与契約のほうが適しています。

死後のペットのための「ペット信託」

負担付死因贈与契約を結んだとしても、死後、本当に契約が守られ、ペットが死ぬまで良好な飼育を受けられるかについては、不安がつきまといます。そのような場合のために、最近では「ペット信託」を利用する人が増えてきています。

ペット信託とは、残されたペットが生涯世話を受けるための資金と場所を、あらかじめ準備しておく仕組みです。亡くなった後のことだけでなく、生前に自力で世話をしてあげることが難しくなる場合のリスクにも、備えることができます。

まず飼い主が、ペットの養育費を資金を管理する人や会社へ信託します。そして、信託開始の条件や新しい飼い主などを決めておきます。信託監督人がペットの様子と飼育費を監督するので、飼育費は確実に守られ、ペットの生活は保障されます。

ただ実際には、新しい飼い主探しが難航して、信託の設定が断念されるようなケースもあるようです。

契約は、慎重に

サブローを養育するという内容の、負担付遺贈契約書にサインをした康介ですが、後から和子に、彼女にとって有利な契約内容を付け加えられてしまいました。

「兄貴があんな女に託すから。」

個人的に信頼できると思った人に事後のことを頼んだとしても、お金や利害が絡むと、豹変する可能性があります。和子は多額の借金を抱えており、何としてでも金が欲しい状態でした。

契約書を押印後に改ざんされた事は想定外だったとして、康介が兄の財産を相続するために、負担付遺贈契約にサインをする必要は、実はありませんでした

兄弟の両親は既に他界しており、兄には子供も配偶者もいません。ということは、相続人は弟の康介1人。わざわざそのような契約を交わさなくても、遺産はちゃんと、手に入ったのです。むしろ、そのような契約書にサインをしてしまったがために、和子に弱みを握られ、恐喝される羽目に陥っています。

重要な契約を交わす前には、よくよく検討して、場合によっては専門家に相談してから判断をするほうが、賢明といえるでしょう。


​この記事は 2016年09月14日 に公開されたのものです。

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