ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」にみる、法律豆知識:その5

「愛人の子」の権利とは?

父も母も知らず、天涯孤独の身の上の麻生珠美。実は彼女は資産家・霧島宗一郎の隠し子であり、遺言で別荘を相続されることになりました。

しかし正妻の長女からは、猛反発を受けます。「こんな遺言残すなんて、何考えているのよ、あのバカ親父!」 突然あらわれた隠し子に遺産の一部が相続されることになったのですから、揉めるのは当然です。

さてこのような場合に、愛人の子である珠美は、どのような権利を持つのでしょうか?

認知の有無で大きな違いが

宗一郎は亡くなる少し前に、珠美を認知していました。結婚していない男女から生まれた婚外子は、父から認知されないと、法的な意味での親子としての権利義務関係が生じません。
宗一郎が認知をして、珠美が承諾することで(成人している子の認知には、本人の承諾が必要)、はじめて珠美は相続人としての地位と、遺留分という権利を手にします。

遺留分とは、亡くなられた方の兄弟・姉妹を除く法定相続人が有する遺産を受け取れる最低限の保障分です。たとえ「誰かに全ての遺産を相続させる」という遺言があったとしても、主張をすれば遺留分までの遺産は受け取ることができる、というものです。

ドラマ中で、相続した別荘が幽霊屋敷で売却もできそうにない、となった珠美は、別荘はいらないから遺留分を請求したいと柿崎に依頼しています。

よく混同されるのですが、遺留分と法定相続分は別のものになります。法定相続分は、遺言がなく、相続争いが裁判に持ち込まれた場合に遺産の分け方の目安となるもので、遺留分とは性質も割合も異なります。

この霧島家の場合は相続人は、正妻の2人の子と、認知された婚外子である珠美の3人です。この場合、3人の相続分はそれぞれ遺産の1/3ずつ、遺留分はそれぞれ1/6となります。

もし、霧島宗一郎の相続の時点で正妻がいたとしたら、相続分は正妻が遺産の1/2、婚外子を含む3人の子がそれぞれ遺産の1/6、遺留分は正妻が遺産の1/4、子供3人はそれぞれ1/12となります。

もし認知がなかったら

宗一郎は遺言で、預貯金などは正妻の2人の子が均等に分けて、別荘の土地と建物は珠美に相続させると書き残しています。
ここで、珠美の認知がなかった場合について、考察してみたいと思います。

遺言によって、相続人でない人にも、遺産を贈与(遺贈)することが可能です。そういった意味では、認知しなくても宗一郎は珠美に遺産を譲ることができたといえます。

珠美が認知されていなかったら、相続人は正妻の子2人です。宗一郎の残した遺産は、別荘や本宅などを含めた総額は不明ですが、預貯金だけで3億あるとのことでした。別荘を5千万として、遺産の総額が3億5千万円と仮定すると、正妻の子2人の遺留分があわせて1億7千500万円。珠美が遺贈されるのが別荘の5000万円だけであれば、遺留分を侵害しないため、相続人でなくても受け取ることが可能です。

遺言に形式上の不備があって無効になれば、遺贈を受けることはできなくなりますが、そうでもない限りは、いくら正妻の子供が反対しようとも、珠美は別荘を手に入れることができます。

資産家で相談先にも不自由なかったと思われる宗一郎が、そのことを知らなかったとは思えません。それでもあえて死ぬ間際に認知をしたのは、娘の認知を望みつつ入水自殺をした珠美の母や、父母の保護を受けられず、1人孤独に生きなければならなかった娘・珠美への、情や贖罪の意識からの行動であったのかもしれません。

認知された婚外子と、婚内子との権利の差は?

認知された婚外子と、結婚している男女から生まれた子(婚内子)の相続分は、現在では平等です。平等になったのはごく最近、平成25年からのことで、それ以前は婚外子の権利は、婚内子の1/2とされていました。

違いが生じるとしたら、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となる場合です。 たとえば、正妻の次女が結婚もせず、子供もいないまま亡くなったとします。父母もいないため、祖父母が存命でなければ、兄弟姉妹である長女と珠美の2人が相続人となります。

その際、父母を同じくする姉妹である長女(全血兄弟)に比べ、父だけが同じ姉妹である珠美(半血兄弟)の有する相続分は、今でも半分です。この点は混同されやすいので、注意が必要です。

婚外子の権利だけに限らず、法律は改正されることがあるため、ご自分が知っている正しいはずの知識でも、現在では違なることになっている、という場合があります。また、関連する法律の効果によって、思った結果が得られないという場合も。

「知らなかった!」と後で困らないためには、その時々で最新の情報をチェックするか、専門家に相談してみるとよいでしょう。


​この記事は 2016年08月08日 に公開されたのものです。

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