隠し子の相続権とは:ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」にみる法律の豆知識

命が危機にさらされている時の特別な遺言「危急時遺言」

遺産相続専門の弁護士・柿崎真一は、リサイクルショップの店主・富沢から、娘に遺言とレコードを届けて欲しいと依頼されます。

その時、病身の富沢は吐血して倒れてしまいます。救急車で運ばれる中、柿崎は同乗した救急隊員2人を証人に、富沢の口頭の内容から遺言を作成しました。

ドラマ内で危急時遺言として紹介された、この遺言の方式について掘り下げてみたいと思います。

一般的な遺言との違いは?

通常の場合に認められる遺言には、あらかじめ直筆で書いて用意しておく直筆遺言証書、公証役場で公証人に作成してもらう公証遺言証書、中身は自作で秘密のまま、遺言の存在だけを公証人に証明してもらう秘密遺言証書の3つの種類があります。

ただし、病気や事故、船舶の遭難などで命の危険が迫っている場合に限って、この3つ以外の特別方式の遺言が認められることになっています。

特別方式の遺言の中の一つである危急時遺言とは、次のような遺言になります。

「死亡の危急に迫った者の遺言」の条件

  • 病気やけがで、死亡の危急が迫った人の遺言形式です
  • 証人3人以上の立会いが必要です
  • 証人のうちの1人に、遺言者が遺言内容を口授します
  • 口授を受けた者が筆記をして、 遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧させます
  • 各証人は、筆記が正確なことを承認した後、署名・押印します
  • 20日以内に家庭裁判所で確認手続を経ないと、遺言が無効になります
  • 遺言者が普通の方式で遺言を行う事ができるようになってから6ヵ月間生存した場合には、無効になります

命が危機にさらされている人に直筆で遺言を書かせたり、臨終の間際に公証人の立ち合いを求めるのは困難な場合が多いため、3人以上の証人がいれば、口述で遺言することが認められています。

あくまで緊急時の遺言の形式となるため、遺言者が普通の遺言をできるようになってから6ヵ月が経過すると、無効になります。

相続放棄で相続人がいなくなった遺産の行方は?

富沢の娘・璃菜は、諸々の事情から父を憎んでおり「あの人のものは一切受け取りたくない」と、託された遺品と通帳の受け取りを拒否します。

唯一の相続人である娘が相続放棄をした場合には、劇中でも紹介されたように、最終的には遺産は国庫に帰属することになります。

ただ、すぐに国庫へ帰属するわけではなく、いくつかの手続きと段階を経ることになります。

「相続財産法人」と「相続財産管理人」

相続人全員が相続放棄すると相続人が存在しないことになります。そのような場合には、亡くなった方の財産は相続財産法人として、管理・清算されていくことになります。

この相続財産法人を管理して、清算事務を行っていくのが相続財産管理人です。相続財産管理人は、相続に利害関係を持っている人や検察官が、家庭裁判所に申し立てることで選任されます。

相続人が存在しない時の手続きの流れ

  1. 家庭裁判所に対する相続財産管理人選任の申立
    利害関係人または検察官が、被相続人の相続開始他の家庭裁判所に申立をしまて、相続財産管理人が選任されます。
  2. 相続財産管理人選任の公告
    相続財産管理人が選任されたことが公告されます。もし相続人がいれば名乗り出るよう促します。相続人がいた場合は、相続財産法人は「はじめからなかったもの」として取り扱われます。
  3. 遺産の管理
    相続財産管理人は、残された相続財産を調査して財産目録を作成したり、債権の回収をしたりするなど、相続財産の管理を行います。
  4. 相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告
    相続財産管理人選任の公告が官報に掲載された日から2か月を経過しても相続人が現れない場合には、亡くなっていた人にお金などを貸していた債権者や、遺言での贈与(遺贈)がある旨が書かれていた人に対して、申し出るよう公告をします。既に存在がわかっている債権者には、個別に催告をします。
  5. 相続人捜索の公告
    家庭裁判所は、管理人または検察官の請求により、6か月以上の期間を定めて相続人の捜索の公告を行います。本当に相続人が存在していないのかどうかを、確かめるための公告です。
  6. 特別縁故者への財産分与の申立
    特別縁故者に該当する財産分与を求める人から、亡くなられた人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。この申立は、上記相続人捜索の公告の期間満了の翌日から3か月以内にする必要があります。
  7. 分与の審判もしくは申立却下の審判
    財産分与をの申立に対して、家庭裁判所が縁故関係の内容や程度などの一切の事情を総合的に調査し、分与もしくは申立却下の審判をします。
  8. 特別縁故者に対する分与財産の引渡し
    分与の審判が確定すると、相続財産管理人は特別縁故者に対して遅滞なく財産を引き渡します。
  9. 残余財産の国庫への引継ぎ
    特別縁故者からの財産分与の申立がないまま、相続人捜索の公告期間満了時から3か月が経過したとき(または分与の申立が却下されたとき)には、相続財産は国庫に帰属します。
  10. 管理事務終了
    管理人は、管理終了報告書を、家庭裁判所に提出します。

このように、相続人、債権者や遺贈を受ける人、特別な縁故者などに呼び掛ける期間を経て、それでも財産を引き継ぐ人がおらず、債務整理をしても残った遺産があれば、国庫に納められることになります。

相続人がいない場合に財産を請求できる「特別縁故者」とは

相続人が既に亡くなっていたり、相続放棄をしたり、欠格者になったりして、法定相続人がいなくなってしまった場合、遺産は国庫に帰属され国のものになるわけですが、その前に遺産を受けとることのできる立場の人がいるのではないか、ということで民法が改正されて始まったのが、特別縁故者による財産分与です。

特別縁故者に該当するのは、次のような人になります。

特別縁故者

  1. 生計を同じくしていた人
    たとえば、一緒に生活をしていたけれど入籍をしていなかった内縁の妻や、養子縁組はしていなかったけど共に暮らしていた、事実上 養子同然の人物などが該当します。
  2. 療養看護に務めた人物
    看護や介護にあたった人も、特別縁故者として認められる場合があります。しかし業務として報酬を得ていた場合(看護士、介護士、家政婦、付添人など)は除かれます。
  3. その他、特別の縁故があった人物
    親子も同然の師弟関係にあった人、亡くなった方から援助を受けていたなど生前に密接な関係にあった人、遺言や契約書はないけれど「自分が死んだらOOをあげる」と生前に、死因贈与の約束をしていた人など。 この分類で特別縁故者として認められるケースは多様で、個人だけでなく、地方公共団体や学校法人などの法人・団体もその対象となり得るとされています。

国に収容されるより先に、法的な関係はなくても、一緒に暮らしていた人や介護に献身した人、特別に親密だった人に財産の分与の余地があるのは、ある意味納得がいくことだと思われます。


​この記事は 2016年08月02日 に公開されたのものです。

記事の正確性には細心の注意を払っておりますが、記事公開後の法改正やガイドラインの変更などの影響により、記事閲覧時における最新の情報とは異なる内容である可能性があります。

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