【相続税対策】孫と養子縁組するメリットとデメリット

孫との養子縁組による相続税のメリット

  • 相続税の非課税枠が増える
  • 生命保険金の非課税枠が増える
  • 死亡退職金の非課税枠が増える
  • 孫への相続の回数を、1回減らすことができる

孫との養子縁組によるデメリット

  • 養子に選ばれた孫、選ばれなかった孫が生じた場合の、親族間の関係悪化の可能性
  • 養子が増えた事によって、法定相続分が減少する相続人が反発する可能性
  • 遺産分割協議がまとまらず、相続税の特例が使えなくなる可能性
  • 相続税の2割加算の対象となってしまいます。(相続人である子が亡くなって、その代襲相続人としての地位を得た孫を除く)
  • 不当減少養子として、税務署から否認される可能性

養子縁組で相続人の人数を増やして、基礎控除額を上げる

相続税は基礎控除額を超えた場合に、その超えた価格に対して課税されます。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額は、法定相続人となる子供の数が増えれば、それだけ増加されます。つまり養子縁組によって法定相続人が増えれば、相続税を減額することができるわけです。

相続財産の総額に対する基礎控除額だけでなく、生命保険金や死亡退職金の非課税金額も増額します。

生命保険金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数

死亡退職金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数

法定相続人が増えると、税率が低下する可能性も

相続税は課税される遺産が多くなるほど税率が高くなる、累進課税方式になっています。現在の税率では、10%から最高55%までとなっています。

そして相続税は、故人が残した財産の総額に対してかかるものではなく、相続人1人あたりが取得した額に対してかかる仕組みになっています。

相続人が増えれば、1人あたりの受け取る遺産の額は減少します。それによって低い税額が適応されれば、結果として相続税の納税額を低く抑えることができます。

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

孫を養子にしたビートたけしにみる、相続税の節税

お笑いタレントとしてだけでなく映画監督などマルチな才能を発揮する、ビートたけしこと北野武氏は、2006年に孫と養子縁組をした事を明かしています。

たけし氏の娘で元タレントの井子さんは、結婚、出産後に離婚。離婚後は実家に戻っており、「井子さんが子供の世話を見られないためにたけし氏が孫を養子縁組した」との憶測が広がっていました。

たけし氏が亡くなられた場合、井子さんは相続人となりますが、孫は相続人にはなりません。井子さんに遺産が渡るので、結果として孫も生活には困らないとは思われますが、孫本人に遺産が直接入るわけではないので、環境の変化によっては、金銭に困る立場に陥る可能性があります。井子さんが詐欺にあったり、事業で失敗したり、何らかの事情で遺産を使い果たしてしまう可能性が全くないとは言い切れないからです。たけし氏が孫の行く末を案じ、直接孫に遺産が入る形にしておくほうが安心だと思った考えたとしても、不思議ではありません。

たけし氏の真意はさておき、孫を養子にしたことによって、相続税の税額がどう変化したかについてフォーカスしてみたいと思います。

たけし氏の相続人は奥さんと長男、井子さんの3人ということになっています。(他に婚外子がいると言われていますが、ここでは相続人は3人とします。)孫と養子縁組すれば、相続人は4人になります。

「たけし氏の遺産が20億円だった場合、相続者が3人でもらった場合、一人あたりおおよそ7億円ですから、最高税率55%が課せられることになります。しかし、4人でもらった場合、1人あたり5億であり、税率も50%で済みます。」

大村大二郎「やってはいけない相続税対策」(小学館新書)より

2回かかる相続を1回に圧縮する効果も

相続税は、親が亡くなって子供が遺産をもらった際にかかるものです。そのため通常であれば、孫が遺産をもらうまでには、まず子供が遺産をもらう際に相続税を1回支払い、そして子供から孫へ遺産が渡る際にもう1回支払うため、合計2回、相続税がかかることになります。

しかし、孫を養子にすると相続税の支払いは1回で済むことになり、相続税を支払う機会を1回減らすことができます。

ただ、実子とは異なり相続税の2割加算の対象者にはなってしまいます。

相続税の2割加算とは、配偶者と一親等の血族以外の人は、その人の相続税額に対して、その2割に相当する金額が加算される制度のことです。

以前は養子になった孫も2割加算の対象外だったのですが、平成15年4月1日以降の相続から、孫養子は2割加算の対象者となりました。

このように、相続税対策として様々なメリットのある養子縁組ですが、制限やデメリットも存在します。

相続税の計算上の養子の人数制限

行き過ぎた税負担回避行為としての養子縁組に対応するために、相続税の計算の上では、養子の数に制限が加えられています。(昭和63年12月の相続税法の改正より)

相続税法上の養子縁組規制

  • 被相続人に実子がいる場合には、被相続人の養子のうち1人のみを法定相続人の数に含める
  • 被相続人に実子がいない場合には、被相続人の養子のうち2人までを法定相続人の数に含める

ただし次のいずれかに当てはまる人は、実子として取り扱われ、法定相続人の数に含まれます。

法定相続人の数に含まれる子の条件

  • 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
  • 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人
  • 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
  • 被相続人の実の子供、養子又は直系の子供や孫が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系の子供や孫。

特別養子縁組とは

6歳未満の未成年者の福祉のため特に必要があるときに、未成年者とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。養親となる者は配偶者があり、原則として25歳以上の者で、夫婦共同で養子縁組をする必要があります。原則として、離婚は禁止されています。

孫を養子にする場合のデメリットとは?

まず、税金対策としての孫の養子縁組には人数制限があるからと、大勢の孫がいる中で1人(実子なしの場合は2人)だけを養子にした場合、親子間、親族間の人間関係に悪影響が生じる可能性があります。

養子に選ばれなかった孫やその親である子の立場になって考えてみると、お金の問題だけでなく、気持ちの問題として納得がいかないという事もあるでしょう。

そして、養子になった孫には法定相続分が生じますが、それはすなわち、養子をとらなかった場合の相続人の法定相続分が減額されることを意味しています。

たけし氏の例でいうと、孫と養子縁組をする前は、奥さんの法定相続分が1/2、長男と井子さんの法定相続分は1/4(1/2を2分割)ですが、孫を養子にした後であれば、奥さんが1/2、長男、井子さん、孫がそれぞれ1/6(2/1を3分割)となります。この場合は、長男の法定相続分が1/4から1/6に減ることになります。

この長男と同じような立場に立たされる人が、納得いかないと感じる可能性を否定することはできないでしょう。

ちなみに孫が10人いたとして、10人全てを養子にする事は可能です。相続税の計算上は1人(実子がいなければ2人)までしか法定相続人としてカウントされせんが、民法上の取り扱いでは、特に不利益などは生じません。

ただし、養子にあたって名字に変更が生じる場合は、名義変更の手続きや、実際の両親と名字が異なるなどの日常の不便が発生する可能性はあるでしょう。

相続税の特例が使えなくなる可能性や、養子縁組否認のリスク

相続税には、申告期限までに遺産分割が完了していることを前提に、条件に当てはまれば、土地の評価額を50%~80%減少させるなど、利用できる特例がいくつかあります。

もし、感情のもつれなどから申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合は、特例が利用できなくなる可能性が生じます。これも、デメリットの一つであるといえるでしょう。

そして最後に気をつけるべきなのは、租税回避目的での養子縁組が税務署に否認される可能性があるという点です。

ご高齢で病の床に伏しているようなときに、あわてて養子縁組をしても、相続税回避以外の理由が見当たらないとして、否認されるかもしれません。そのあたりについては前もって、実務に長けた専門家に相談しておくほうが賢明だといえるでしょう。

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​この記事は 2016年06月27日 に公開されたのものです。

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